家づくりを考え始めたあなたにとって一番大きな不安は「お金」のことではないでしょうか?
SNSやHPで見る建築事例にはいくらかかっているのか、自分の住む地域ではいくらで家を建てられるのか、そして自分たちはいくらまでなら支払・返済していけるのかといった不安や疑問があることでしょう。
そこで、自分たちに合った予算の決め方や、家づくりにはどのような費用が掛かるのか、「家づくりのお金」について徹底解説していきます。
【結論】「返せる住宅ローン額」から逆算してマイホームの予算を決める
家づくりの予算を決めるうえで大切なのは、住宅ローンを利用しての支払いを続けられること。
無理をして夫婦の収入目いっぱいのローンを借りてしまうと、お子様の誕生や病気やケガ、転職などで環境が変わった時に対処しきれなくなってしまいます。
とはいえ、「今の家賃と同額で」というのは、地域や家の大きさによって現実が難しいことも多いです。
自分たちの収入や今の支出状況から、無理のない返済金額を割り出し、「生活水準を変えない範囲で返せる金額の住宅ローン借入額」を目安として予算を決めていきましょう。
注文住宅の予算を決めるための基礎知識
注文住宅の予算を考える時は、まずどのような費用が掛かるのかの全体感を把握しておく必要があります。
何にいくらくらいの金額がかかるのかがわかっていないと、相場から大きく外れた予算を提示してしまったり、各社が出す見積金額が高いのか安いのかの判別もつきにくくなったりします。
土地の条件によっても大きく変動がありますが、どんな費用項目があるのかは知っておきましょう。
注文住宅に必要な費用の内訳
一般的な注文住宅にかかる費用は、「土地購入費」「建物建築費」「諸費用」の3つに分けられます。
このうち建物建築費はさらに、本体工事費(約7割)、付帯工事費(約2割)、諸費用(約1割)に分けられ、建物そのものの設計や施工に加え、外構工事や水道引き込みなどの付帯工事費も見積もりに含める必要があります。
諸費用では登記費用や契約書の印紙税、土地購入時の固定資産税の日割り分、火災保険料なども発生します。
全体像を把握し、見落としのない計画を立てることが大切です。
自己資金と住宅ローンの基本構成
家づくりの予算を決める際には、自己資金と住宅ローンをどのようにバランスさせるかを考える必要があります。
自己資金とは、手元で準備できる資金のことです。
ご自身の貯金と、親族からの援助がこれに含まれます。
自己資金で頭金を入れる場合、一般的には物件価格の10%から20%程度が多いです。
もしくは土地代金を現金で賄うというケースもあります。
一方で、「住宅ローンで全額を賄い、やむを得ない費用のみ現金で支払って、あとは手元に残しておき資産運用をする」という考え方も浸透してきています。
手付金や契約金、印紙代等で最低でも30~100万円ほどの現金は必要です。
建築費用の相場と土地代のバランス
建築費用は大きく分けて「建築費用」と「土地代金」と「諸費用」に分けられます。
建築費用と土地代金がどのくらいになるかで必要な金額が変わりますし、一定の金額内に収めたいとしたらどちらにウェイトを置くかの判断が重要となります。
一戸建て住宅の全国的な平均費用として、建物価格は約3715万円、土地付き注文住宅の総額は約4694万円といわれています。
しかし、地域によって土地代に大きな差があるので、都市部では土地代の割合が増える一方、地方では建築費用に予算を取る傾向が見られます。
住みたいエリアの土地相場を知ることも大切です。
「自分の想定している予算でその地域に家を建てることができるか」は家づくりや土地探しの重要な指標となります。
諸経費の計算と予算に含めるべき項目
注文住宅の資金計画では、建物や土地以外にも多くの諸費用が発生します。
諸費用には、登記費用、印紙税、不動産取得税、住宅ローン手数料などが含まれ、一般的に物件価格の10%程度を見込む必要があります。
また、入居時にはカーテンや照明器具の購入、引っ越し費用などもかかるため、50~100万円程度の入居費用を別途用意しておくことが推奨されます。
これに加え、固定資産税やメンテナンス費用など、住み始めてからも必要になる費用を考慮して、予算に余裕を持たせておくことが重要です。
希望を叶えるための資金計画とは
理想のマイホームを実現するためには、長期的な視点で資金計画を立てることが不可欠です。
まずは、「月にいくらまでの支払いなら今の生活が維持できるのか」を考えましょう。
例えば、現在の家賃が駐車場を含めて7万円であり、マイホームのために月に3万円貯金をしているなら、月に10万円を支払うローンであれば今と同じ生活水準が保てるはずです。
支払える月額がわかると、自分たちの「払えるローンの借入額」が決まります。そこに自己資金や親からの援助を足した金額が「家づくりの予算」です。
次に、「どんな家に住みたいのか」「どのエリアに建てたいのか」といった希望を明確にし、それを実現するとどのくらいの金額になるのかを知ることが大切です。
住みたい家のデザインや性能を重視するのなら、「家づくりの予算―(建築費用+諸経費)=土地の予算」となります。
その土地の予算では希望エリアの土地が買えないようであれば、建築費用もしくは住みたいエリアのどちらかで妥協が必要ということです。
両方を叶えるために予算を追加するかどうかは慎重に判断すべきでしょう。
また、生活予備費や将来の教育費などの貯蓄を切り崩さないように注意し、家族の将来設計に基づいて資金配分を行うことで、安心して取組むことができます。
住宅ローンの借入可能額と予算の決め方
多くの方が家づくりの際に利用する住宅ローン。
数十年と支払いを続けていくものなので、たくさんの種類の中からより条件の良いものを選びたいと思うことでしょう。
ここでは、住宅ローンの基本的な知識や、選び方について解説します。
固定金利と変動金利
住宅ローン選びでは「固定金利」と「変動金利」のどちらを選ぶかが重要なポイントです。
固定金利は借入期間中の金利が一定で、返済額が安定しているため、長期間にわたり家計管理がしやすいのが特徴です。
固定される期間によって金利が変わることが一般的で、長くなるほど高くなる傾向にあります。
住宅ローンの固定金利で最も安心できるのは「フラット35」などの「全期間固定金利」タイプです。
金利は変動金利よりも高いですが、ずっと支払額が変わりません。
返済総額も変動金利より高くなりますが、大幅な金利変動によって未払い利息が発生するような事態に陥ることもないので、住宅ローンに対して「安定や安心」を求める方におすすめです。
一方、変動金利は金利が市場の動きによって上下します。
基準金利に対して金融機関ごとに設定した優遇金利によって各社の適用金利に差が出るようになっています。
金利が低い時は返済額が低くなるメリットがありますが、金利が上昇した場合に返済額が増えるリスクも伴います。
全期間変動金利の場合は半年ごとに金利が見直され、支払金額は5年ごとに変わるのが一般的です。
3年固定、10年固定などの場合は、固定期間終了後は変動金利となります。
経済情勢によって支払金額が変わる可能性があるので、余裕を持った支払い計画を立てておくことが大切となります。
年収に基づく借入可能な金額の計算
住宅ローンをいくら借りられるかは年収によって決まります。
上限が決まっているので、それを超える金額は借りることができません。
また、ほかのローンも合算されるため、車のローンの支払いが残っている場合は大幅に借入可能額が減る可能性があります。
借入可能額は、返済比率で求められることが多いです。
年収に対して、年間で返済に充ててよい金額の割合のことを返済比率と言い、年収400万円未満で30%、年収400万円以上で35%です。
例えば、年収300万円の人が1年間に返済に充てられる金額は300万円×30%=90万円、年収500万円の人で500万円×35%=175万円となります。
これに借入年数を掛けたものが、利息を含む借入可能な総額です。
35年の場合、年収300万円の人で3150万円、年収500万円の人で6125万円。
それぞれ利息が含まれていますので、仮に金利が1%だとすると、年収300万円の人が2656万円、年収500万円の人が5166万円です。
あくまで借入可能額は「借入できる上限金額」なので、月々の支払金額に直すと、生活が厳しくなるような金額になってしまうこともあります。
「予算=借入可能額ではない」ということは覚えておきましょう。
また、車など他のローンを借りている場合、たとえあと2~3年で終わるローンだったとしても、その年間支払額が借入年数すべてで減額されます。
例えば、先の年収500万円の人の年間支払可能額は175万円でしたが、今車のローンが年間48万円ある場合、それを差し引いた127万円×35年=4445万円が借入可能額として計算されることがあるのです。
住宅ローンを有効活用したい方は、自己資金をほかのローンの完済に充てるのがよいでしょう。
すべての住宅ローンから自由に選べるわけではない
住宅ローンの借り入れには審査があります。
年収や勤続年数、健康状態など金融機関によって審査基準は異なります。
住宅ローンを利用するにはまず、審査を通過することが条件となります。
今までは勤続年数が長いことが重要な審査ポイントでもありましたが、転職が一般的になったことから、一部のネット銀行やフラット35を提供する金融機関では勤続年数に特別な線引きを行っていないケースも増えてきています。
ローンの種類が増え、審査基準が緩和されても、自分たちがローン審査に通過できなければ家の建築費用が用意できません。
「より低金利なものがいい」「全期間固定がいい」など希望はあると思いますが、複数の金融機関で審査を受け、通過したものの中から選択しましょう。
繰り上げ返済のメリット・デメリット
繰り上げ返済は、月々の返済額とは別に追加で返済を行う仕組みで、住宅ローンの総返済額を減らす効果があります。
メリットとしては、利息の軽減や早期返済による心理的な安心感が挙げられます。
しかし、手元の資金が減少するため、生活予備費や緊急時の資金が不足するリスクも考慮する必要があります。
繰り上げ返済には、「返済の残り回数を減らすタイプ」と「返済の残り回数は変わらず、返済額が減るタイプ」の2種類があります。
前者の方が割合として多いですが、利用する金融機関がどちらを採用しているのか事前に確認しておきましょう。
また、繰り上げ返済には手数料が生じることがあります。
「100万円以上の繰り上げ返済なら手数料がかからない」等の仕組みも金融機関によって異なります。
こまめな繰り上げ返済よりも、まとまった金額で繰り上げていくほうがよいでしょう。
また、住宅ローン減税を受けている場合の繰り上げ返済も注意が必要です。
住宅ローン減税の対象となっている期間では、住宅ローンの残額に応じて減税額が決まります。
つまり、減税対象期間はローン残額が多く残っている方が減税率が高いので、「繰り上げ返済による金利減少効果」と「繰り上げ返済をしないことによる減税効果」とを天秤にかけた選択が重要です。
低金利で住宅ローンを借りている場合は、住宅ローンの減税効果の方を優先した方がよいケースが多いです。
家づくりやマイホーム計画を進めるうえで、繰り上げ返済を効果的に活用するためには、無理のない範囲で行うことがポイントです。
例えば、ボーナス時に一部を充てたり、生活費に負担をかけない範囲で計画的に実施したりすると、長期的な資金管理がスムーズに進むでしょう。
予算設定時の注意点と失敗例
家づくりの予算設定は、「理想やこだわりを叶えた家を作れるか」と「無理なく支払を続けていけるか」を決める大事な決断です。
未来のことは誰にもわかりませんが、できるだけ後悔のない選択をしていくために、予算設定でどのような点に気を付けるべきかをご紹介します。
予算オーバーを防ぐ計画の立て方
注文住宅の計画において、最も避けたいのは予算オーバーです。
マイホーム計画を成功させるためには、家づくりにかかる全体費用を正確に把握することが重要です。
本体工事費だけではなく、付帯工事費や諸費用といった「見えにくいコスト」を見落とさないよう注意しましょう。
また、建物の設計や設備に対する希望を明確にし、優先順位を付けることも予算オーバーを防ぐポイントです。
家づくりの打ち合わせを始めると、SNSなどを見てどんどん素敵な事例を取り入れたくなってしまう時期があります。
当然予算内でできることには限りがあるので、あれもこれもとならないよう冷静に判断していきましょう。
想定外の費用に備えるポイント
家づくりでは、想定外の費用が発生することがよくあります。
例えば、地盤改良費や追加の工事費用、水道引き込み工事費用、外構費用などが代表的です。
地盤改良費は地盤調査を行わないといくらかかるかわかりません。
また、水道工事も本管の位置や道路種別によって大幅に費用に差が生じます。
これらの予想外の支出に対応するため、あらかじめ予備費を準備しておくことをおすすめします。
具体的には、契約金額の約10%程度の余裕を持って確保しておくと安心です。
また、ライフスタイルの変化や突発的な出費に備え、生活予備費として3~6カ月分の生活費を手元に残しておくのも重要なポイントです。
生活費を圧迫しない予算の目安
住宅ローンの返済計画を立てる際、無理なく支払いができる予算設定が肝心です。
一般的な目安として、年間返済額を年収の25%以下に抑えることが推奨されています。
例えば、年収400万円の方であれば、年間返済額を100万円以下に設定することが理想的です。
返済負担率を低く設定することで、突発的な出費が発生しても生活を圧迫しにくくなります。
また、住居費に過剰な予算を割かず、教育費や将来の貯蓄など他の費用にも余裕を持たせることが、健全な家計管理につながります。
住まいのデザインや設備への予算配分
注文住宅では、デザインや設備に重点を置きたくなるものです。
ただし、それに見合った予算配分を行わなければ、予算オーバーに繋がる可能性があります。
例えば、キッチンや浴室などの設備選びでは、機能性とデザイン性のバランスが取れたアイテムを選ぶことが大切です。
また、こだわる部分と妥協する部分を明確にし、本当に必要な要素に予算を集中させましょう。
事前に建築会社や専門家とよく相談し、家族のライフスタイルに合った計画を立てることが、理想のマイホームを実現するカギです。
資金計画は中立の立場のFPに相談するのも◎
初めての家づくりでは何にどのくらいの費用が掛かるかを自分で予想することは困難です。
ハウスメーカーの資金計画では、予算オーバーにならないよう余裕を持った計画を立てるので、中には高額に感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。
もしハウスメーカーや工務店の見積通りの家を建てた場合に、自分たちのキャッシュフローはどうなるのかといった不安がある場合は、住宅会社に在籍するFPや、ファイナンシャルプランニングを中立的に行っているFPに相談するのも有効です。
住宅会社の営業では「家を建てられる・建てられない」の判断材料はくれますが、「建てた後の生活がどうなるか」までは判断が難しいこともあるでしょう。
建てた後も踏まえて計画していくために、FPへの相談も視野に入れて行動するのがおすすめです。そして、不安を払しょくした状態で家づくりに臨みましょう。